商品の自主回収とは?発生理由や流れ、回避するための対策を紹介

自主回収(リコール)とは、商品に問題や事故につながる可能性がある場合、事業者が消費者に告知し、製品の引き取りや交換、修理を行うことです。
自主回収は、消費者の安全を守るための当然の責務である一方、対応を誤ると、ブランドイメージの失墜や損害賠償請求、事業継続の危機へと直結する恐れがあるため、注意が必要です。
本記事では、自主回収の原因や発生しやすい業種、発生時の初動対応から再発防止策まで、事業者が取るべき対応を網羅的に解説します。
記事後半では、自主回収を未然に防ぐための効果的な方法についても紹介します。危機管理体制のさらなる強化にお役立てください。特にパッケージの表示ミスによる自主回収は事前に防ぐ手段がありますので、ぜひご覧ください。
目次[非表示]
- 1.商品の自主回収(リコール)とは?
- 2.どんな業種で自主回収(リコール)が発生するのか?
- 3.自主回収(リコール)が発生する理由
- 4.令和3年6月1日から、食品などの自主回収を行った場合に届出が義務化!
- 4.1.報告対象となるのはどんなケース?
- 4.1.1.食品衛生法違反、またはその疑いがある場合
- 4.1.2.食品衛生法違反、またはその疑いがある場合
- 4.2.原則オンライン上のシステムから報告する
- 4.1.報告対象となるのはどんなケース?
- 5.自主回収の流れ
- 6.自主回収(リコール)を回避するための防止策とは?
- 6.1.安全基準・ルールの徹底
- 6.2.リスクアセスメントの実施
- 6.3.事故・クレーム情報の収集と製品への反映
- 7.review-it! for Packageなら、自動表示チェックで自主回収(リコール)リスクを軽減!
- 8.まとめ
商品の自主回収(リコール)とは?
自動車のリコール制度が有名ですが、他の商品でも自主回収(リコール)はあります。
自主回収とは、消費生活用製品による事故の発生および拡大の可能性を最小限にするための、以下の対応を指します。
製品の製造、流通、販売の停止、ならびに流通・販売段階からの回収
消費者に対する、製品リスクに関する適切な情報提供
同様の製品事故などの未然防止を目的とした、消費者への注意喚起(使用上の注意など)
消費者が所有する製品の交換、改修(点検、修理、部品交換など)、または引き取り
「製品事故は起こりうる」の認識のもと、常日頃からリコール体制を整備しておくことが重要です。
製造事業者または輸入事業者が、製品事故の発生や兆候を発見した際は、迅速かつスムーズに自主回収を実施することが求められています。一方、販売事業者や流通事業者、修理事業者、設置事業者などは、自主回収を実施する事業者から要請があった場合、協力することが望ましいとされています。
どんな業種で自主回収(リコール)が発生するのか?

製造事業者だけでなく、輸入事業者や販売事業者、流通業者、修理業者、設置事業者など、製品ライフサイクルの各段階に関わるあらゆる事業者が自主回収を行う主体となり得ます。
万全な安全管理をしても、メーカーが製品事故を完全になくすことは難しいのが現状です。自主回収が発生する例として、以下の業界を挙げます。
食品業界
家電業界
輸入販売業界
様々な事業者の製品が自主回収の対象となっており、原因も1つではありません。
食品業界
食品において、以下の製品事故(回収・返金)が発生しています。
クレープケーキ:アレルギー表示の欠落
ゼラチンのアレルギー表記が欠落していたため、返金・回収対応の実施
冷凍チャーハン:アレルギー表示の欠落
卵のアレルギー表示が漏れていたため、商品回収
乳児用液体ミルク:缶のフィルム片混入の疑い
製造過程で、缶の内側を保護するフィルムの一部がはがれ、製品に混入した可能性があるため、商品回収
家電業界
家電製品において、以下の製品事故(回収・返金・点検/交換)が発生しています。
蓄電池一体型システム:内部部品の発熱・溶融
ケース内の湿度上昇が原因で、特定のフィルムコンデンサが発熱し、溶ける可能性が判明したため、点検と交換が行われました。
オーブントースター:使用中のガラス扉破損
使用中に突然ガラス扉が割れる事故が発生したため、製品の回収と返金が行われました。
小型電気洗濯機:安全基準不適合(脱水機の回転停止機能)
脱水機のふたを開けても回転がすぐに止まらない構造で、安全基準を満たしていないことが判明したため、返金と回収が行われました。
輸入販売業界
輸入製品において、以下の製品事故が発生しています。
輸入した電気ストーブ:発火事故
部品の不具合による発火事故が4件発生し、製品回収が行われました
本事例では、当該業者が負債を抱えて事業継続が困難な状況であり、製品の回収などの対応が期待できませんでした。
この事態を受け、電気ストーブを販売していた事業者3社が、輸入業者に代わって自主的に製品回収を行いました。特売チラシに回収のお知らせを掲載するなどして、積極的に回収活動を実施しました。
自主回収(リコール)が発生する理由
自主回収は、消費者の健康と安全を守るために、事業者が行う重要な措置です。以下では自主回収の原因について食品業界を例に紹介します。
食品業界の場合、届出が義務づけられる自主回収は、「食品衛生法違反」と「食品表示法違反」の2つです。
【食品衛生法違反】
大腸菌などの有害な微生物による汚染
金属片やガラス片などの異物混入
【食品表示法違反】
アレルギー物質(アレルゲン)の表示漏れや誤り
消費期限や賞味期限の表示ミスや欠落
保存方法の記載ミス
実は、食品表示法違反による自主回収は、食品衛生法違反による自主回収よりも多く発生しています。
2021年6月1日~2022年2月末までの自主回収事例:計1,430件のうち約67%にあたる958件(※1)が食品表示関連でした。
食品衛生法関連の自主回収よりもはるかに多い数字です。
2024年1月~12月の1年間だけでも、食品表示に関連する自主回収は342件(※2)もありました。(2025年3月24日時点)
2021年6月1日~2024年3月末までの累計では、なんと4,118件もの「食品表示法違反」による自主回収が報告されています。さらに「食品表示法違反のおそれ」として自主回収されたケースは469件、「その他の食品表示に関連する自主回収」も254件(※3)にのぼります。
※1出典:厚生労働省「食品等のリコール公表情報」※2出典:厚生労働省「公開回収事案検索」
検索条件は以下の通りです。
・届出年月日:2024年1月1日~2024年12月31日
・回収の理由:食品表示法違反、食品表示法違反のおそれ、その他(食品表示法)
令和3年6月1日から、食品などの自主回収を行った場合に届出が義務化!
2021年(令和3年)6月1日より、食品衛生法および食品表示法の改正に基づき、食品などの自主回収に関する情報を行政へ届け出ることが義務化されました。法改正により、自主回収への対応の重要性は一層増しています。
製品事故の発生や兆候を発見した際は、迅速かつ的確な自主回収の実施が不可欠です。人的被害の拡大の可能性に気付いていながら届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、行政処分の対象になったり、損害賠償や刑事責任が科せられたりする可能性があります。
報告対象となるのはどんなケース?
以下のいずれかに該当する場合は、必ず自治体(保健所など)へ自主回収情報を届け出ましょう。
食品衛生法違反、またはその疑いがある場合
⇒消費者の健康に直接的な危害を及ぼす可能性がある場合が該当します。
食中毒の原因となる菌(例:腸管出血性大腸菌)に汚染された生野菜やナチュラルチーズなど
包装不良による腐敗・変敗した食品
ガラス片やプラスチック片など、硬い異物が混入した食品
菌の数値が基準値を超えている、添加物が過剰に使用されているなど、成分規格に適合しない食品
食品衛生法違反、またはその疑いがある場合
⇒誤った表示によって、消費者が健康被害を受ける可能性がある場合です。
アレルギー物質(アレルゲン)の表示漏れや誤記(例:小麦粉使用なのに「小麦」の記載がない)
消費期限や保存温度の誤表示(例:実際の期限より長く表示、本来より高い温度で保存可能と表示)
特定の成分表示の欠落(例:「L-フェニルアラニン化合物」の表示義務があるアスパルテーム使用製品で表示がない)
一方で、以下のケースでは報告は不要です。
食品衛生上、危害が発生するおそれがなく、厚生労働省令・内閣府令などで報告不要と定められている場合
品質の問題や、単なる商品の入れ間違いなど、健康被害に直接つながらない軽微なケース
原則オンライン上のシステムから報告する
食品などの自主回収の届出は、食品衛生申請等システムにアクセスして行います。届出を出してから消費者に公表されるまでの流れは以下の通りです。
食品の製造・販売者が自主回収に関する情報をオンラインで入力し、都道府県などに届出を出す
都道府県などが自主回収を行った食品をクラス分類し、厚生労働省・消費者庁に報告する
厚生労働省・消費者庁が回収情報を一元的に把握し、消費者に公表する
自主回収の流れ
製品において事故が発生した場合や、事故の発生を予見させる兆候を発見した場合は、以下の手順で速やかに対応を進めましょう。緊急時に滞りなく対応するためにも、事前に流れを把握しておくことが重要です。
事実関係の把握など
自主回収を行うかどうかの判断
対策本部などの実施団体の設置
自主回収プランの策定。自主回収の目的、実施方法(回収か修理かなど)、対象となる消費者の特定、必要な経営資源の見積もりなど。
情報提供の方法や広告を決定
関係者機関への連絡と協力要請
複数の事業者との連携も踏まえ、対応マニュアルを作成しましょう。自主回収の発生時には様々な費用も必要になります。経済産業省は、自主回収の実施にかかる費用の例として、以下の9つを挙げています。
原因究明費用
修理用部品、代替品などの製作費用
社告など、情報提供のための費用
情報収集のための費用 (消費者からのアクセスのために用意するフリーダイヤル費用など)
回収、交換、改修、代替品貸与のための費用(回収品の一時保管の費用を含む)
臨時対応のための人件費
弁護士費用
販売の停止期間中の経費
外部のコンサルタント、支援サービスなどの利用費用
発生する費用を事前に確認・把握しておくことが重要です。リコール保険(生産物回収費用保険)への加入も検討し、リスクに備える必要があります。
自主回収(リコール)を回避するための防止策とは?
自主回収(リコール)を防ぐためには、常日頃からの取り組みが重要になります。具体的な防止策は以下の通りです。
安全基準・ルールの徹底
リスクアセスメントの実施
事故・クレーム情報の収集と製品への反映
安全基準・ルールの徹底
製品事故を防ぐために最低限守るべき安全対策が、消費生活用製品安全法などの法律や規則で定められています。国際規格やJIS規格、業界基準など、関連する安全基準やルールがあれば、参考にし、製品の安全設計に反映させるのが大切です。
安全基準やルールを守るだけでなく、仕入れた部品が契約通りの性能を満たしているか、定期的に確認することも重要になります。
リスクアセスメントの実施
消費者の安全を守るために、安全な製品を製造し、提供することは事業者の責任です。製品の企画・設計段階だけでなく、販売後も継続的にリスクアセスメント(危険性の評価)を実施することが求められます。
製品のリスクを社会的に許容できるレベルまで低減させることが重要です。
事故・クレーム情報の収集と製品への反映
万が一の自主回収をスムーズに行うためには、製品事故の発生や、事故を招く可能性がある欠陥の情報を、適切に収集できる体制を整えておくことが不可欠です。
体制を整備する際には、製品事故などの情報が、経営層を含む全ての役員・従業員、社内の全部門に伝わる可能性があることを前提に行います。
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自主回収になるような法違反を防ぐためには、厳重な表示チェックも重要です。しかし、人の目だけで膨大な情報を完璧にチェックするのは限界があり、見落としがないか常に不安がつきまといます。
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まとめ
自主回収(リコール)とは、商品に問題や事故を招く可能性がある場合、事業者が告知し、製品の引き取りや交換、修理を行うことです。自主回収が発生すると、届出を出すなど様々な対応が必要なほか、ブランドイメージにも影響するため、防ぐための対策を講じる必要があります。
自主回収の原因は、食品衛生法違反よりも、食品表示法違反の方が圧倒的に多いのが現状です。食品表示のミスをなくすことが、自主回収防止の最重要課題と言えます。校正ツール「review-it! for Package」なら、不正表示のリスクを減らすことが可能です。